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コンシェルジュブログ

コンシェルジュ : 小関 智子
【2006年6月4日[Sun]】

「麗しのマントヴァ公」のおもかげ ~マントヴァ(ロンバルディア州)~

先日、ちょいと用事があって、Mantova(マントヴァ)に立ち寄った、というより仕方なく寄ることになってしまった。私にとってマントヴァは、実は「ちょいと寄る」という対象の所ではない。ルネサンス時期の物語や小説好き(といってもほとんど塩野七生さんもの)な私としては、このマントヴァはかなり重要な都市で、じっくりと腰をすえて訪れたい場所のひとつであった。決してちょっと寄って見るという場所ではなかったのである。しかも、ちょっと寄ることになってしまったので、なんとカメラすら持っておらず、ここに画像を載せられないのが本当に残念!
マントヴァといえば、ルネサンスの時代には、イタリアにおける5大強国(ローマ法王庁、ヴェネツィア共和国、フィレンツェ共和国、ミラノ公国、ナポリ王国)に次ぐ、中小国群のひとつで、そしてその中でも筆頭といえるフェッラーラより、その教養の高さからルネサンス史上最高の女性ともうたわれた、かのイザベッラ・デステがフランチェスコ・ゴンザーガに嫁いで来たところでもある。このイザベッラのもと、北イタリアにおけるルネサンス文化の中心として、大輪の花を咲かせたところであり、現在ではヴェルディの「リゴレット」の舞台の街としても知られているところである。
私は、今この現在のイタリアよりも、住んでみたかったなと思うところがいくつかあり、例えば栄華を極めた頃のヴェネツィア共和国や、このイザベッラ・デステとその夫であるフランチェスコ・ゴンザーガが統治していたマントヴァもそのひとつである。名君が存在し、文化の香りがあふれていた時代というのは、どんなにか素晴らしいだろうと思うのである。
そして、このマントヴァを訪れて、実は“ある人”に会いたかったのだ。そう、とても高貴な方・・・と言っても、もうこの世には居ない。その人とは、歴代のマントヴァ公爵の一人の、「ヴィンツェンツォ・ゴンザーガ」である。
私は、ある街を訪れるときには、その土地のガイドブックを読んでいくより、ある程度史実に基づいた、その街に関する小説を読んでから行くのが好きだし、面白いと思っている。専門家がやたら解釈をつけているガイドブックを読んでも、はっきり言ってなんだかよく分からないことも多いし、ロマン?に浸れない。それに比べて小説などを読んでいくと、興味の対象がグンと増え、勝手な想像をめぐらせながら、とーっても楽しく、興味深く観光が出来るのである。これが、私の旅行を数倍楽しくさせるひとつの方法である。
そして、この「ヴィンツェンツォ・ゴンザーガ」だが、これも塩野さんの小説に出てくる人(しかも主人公ではない)なのだが、とても憎めない人で、また彼に対する描写に、「・・・これほどの美男の若者がいたとは想像もしていなかった。すらりとのびた若々しい身体、ふさふさと肩までとどく金髪の巻き毛、流行の細い口ひげの下のくったくのない微笑み」という所があり、それを想像したときに、正に私の想像する王子様像とぴったり一致したことから、勝手にファンだったのである。(ご興味ある方は、是非、塩野七生さんの「愛の年代記」をご一読くださいませ。)
マントヴァの、それは立派な「ドゥカーレ宮殿」には、ゴンザーガ家歴代の公爵の肖像画があるというではないか。私は、マントヴァに行ったなら、是非このヴィンツェンツォの肖像画に会いに行こうと楽しみにしていた次第である。
そういうわけで、マントヴァという街には、それなりの準備、心構えをして、ゆっくりと訪れるべきところであった。そして、期せずして思わず訪れてしまったマントヴァ。まあ、街の名所・見所は、皆様に直に見ていただくことを願ってここでは触れないが、印象としては、まさに中世に「タイムスリップ」するような感覚に陥ることができる街である。ゴンザーガ家が栄華を極め、イザベッラ・デステがいた時代と街の風景自体はそんなに変わっていないだろうな・・と思わせる佇まいである。
今回は、もちろんゆっくりと「ドゥカーレ宮殿」を見学することもできず、私の「麗しのマントヴァ公」を拝むことはできなかった。またあらためてゆっくりと行くことにしよう。でも実際に彼の肖像画があって・・・それが・・・と思うとなんだかドキドキものである。すごーく見たいけど、なんだか見るのも怖いような・・・とにかく、次回マントヴァを訪れるときまでこの楽しみは取っておけると、ちょっとホッとしたりもした。私の「麗しのマントヴァ公」のおもかげを求める旅はまだまだ続く。
追伸、マントヴァにいかれたら、ガイドブックにはほとんど載っていませんが、是非「TEATRO BIBIENA」(Via Accademia, 47)を訪れてみてください。小さいながら、とっても素敵な造りの劇場で、2ユーロで入場見学できます。マントヴァの街の文化のクオリティーの高さが感じられる趣ある劇場です。
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